「安静にしていたのに、なぜか体調が悪い…」その理由、ご存知ですか?
病気や怪我の治療のために入院したり、風邪で数日間寝込んだり…。療養中は「安静第一」と言われます。しかし、安静にしていたはずなのに、「かえって体の節々が痛い」「頭痛やめまいがする」「朝スッキリ起きられない」といった、別の不調を感じた経験はありませんか?
それは決して気のせいではありません。実は、この「安静」が、時として新たな不調の引き金になることがあるのです。
この記事では、療養中に起こる不調の意外なメカニズムと、その予防・改善のために私たち整体師がお手伝いできることについて解説します。
なぜ療養中に不調が起こるのか?カギは「生活不活発病(廃用症候群)」
長期間、体を動かさないでいると、私たちの体には様々な変化が起こります。これを医学的に「生活不活発病(廃用症候群)」と呼びます。
具体的には、以下のようなことが体内で発生します。
- 筋力の低下と筋肉の硬化: 使われない筋肉は痩せ衰え、硬くなります。特に体を支える筋肉が弱ることで、姿勢の悪化や関節の痛みにつながります。
- 血行不良: 筋肉は血液を送り出すポンプの役割も担っています。動かないことでこのポンプ機能が低下し、全身の血行が悪化。老廃物が溜まり、コリや痛みの原因となります。
- 自律神経の乱れ: 活動と休息のリズムが崩れることで、自律神経のバランスが乱れやすくなります。これにより、頭痛、めまい、不眠、倦怠感といった、原因不明の不調が引き起こされることがあります。
つまり、療養中に新たな不調を感じるのは、元の病気が悪化したのではなく、動かないことによる「生活不活発病」が始まっているサインなのかもしれません。
特に、首や肩周りの筋肉は、寝ている時の姿勢や枕の高さなどでも緊張しやすく、ここの血行不良は自律神経の乱れに直結しやすいと言われています。
例えば、こんなお悩みはありませんでしたか?(実際の事例から)
「生活不活発病」と言われても、ピンとこないかもしれません。しかし、実際にあったご相談を例に挙げると、イメージしやすいかと思います。
ケース1:風邪で寝込んだ後、朝起きられなくなった学生
中学生の時に1週間風邪で寝込んだ後、6年以上も朝の強い倦怠感に悩まされていた専門学校生がいました。これは、療養中の活動低下が自律神経のバランスを崩し、社会復帰後もその影響が尾を引いてしまった、典型的なケースと考えられます。
ケース2:手術後の入院で、頭痛が悪化した男性
不整脈の手術で入院した後、もともと持っていた片頭痛が悪化してしまった40代の男性もいらっしゃいました。手術という体への大きなストレスと、その後の安静による血行不良や筋肉の緊張が、頭痛の引き金を引いてしまった可能性が考えられます。
このように、きっかけは様々ですが、「体を動かさない期間」の後に原因不明の不調が続く方は、決して少なくありません。
療養中の不調、整体にできること
もちろん、病気や怪我の治療中は、医師の指示に従い安静にすることが何よりも大切です。しかし、体力が落ちている状態で、ご自身で運動やストレッチを始めるのは難しいものです。
そこで、私たち整体師が「体の専門家」としてサポートできることがあります。
私たちの役割は、病気を治療することではありません。ご自身では動かせない筋肉に対し、外から優しい刺激を与えてあげることで、硬くなった筋肉を緩め、滞った血行を促進し、自律神経が整いやすい環境作りをお手伝いすることです。
いわば、体が再びスムーズに動き出すための「準備運動」や「潤滑油」のようなものだとお考えください。
実際に、原因不明の倦怠感や頭痛に悩まされていた方が、体の緊張を緩めることで、少しずつ活動的になれたというケースは少なくありません。
はじめにご理解いただきたいこと:整体の役割
私たちは「体の専門家」として、筋肉や骨格のバランスを整えることで、皆さまの健康をサポートすることに誇りを持っています。
一方で、日本の法律上、整体は医師が行う「医療行為」とは区別されています。
そのため、不眠や体の痛みといった症状でお悩みの場合、その背景に治療が必要な病気が隠れていないかを確認するためにも、まずは専門の医療機関で適切な診断を受けることが必要です。
私たちは、その診断を踏まえた上で、「体のコンディションを整え、自律神経が正常に働きやすい環境を作る」という側面から、皆様の健康を力強くサポートします。医療とは異なる視点から、あなたの回復への道を一緒に探していくパートナーでありたいと考えています。