「産後うつ」や「育児ノイローゼ」という言葉を耳にすることがあります。それだけ、出産後に心身の不調を感じるお母さんが多くいらっしゃるということかもしれません。
こうした不調は、医学的にはさまざまな名称で呼ばれることがありますが、整体的な視点から見ると、自律神経の乱れ(いわゆる自律神経失調症の状態)が関係しているケースもあるのではないかと考えています。
では、なぜ出産後にこのような状態になりやすいのでしょうか。予防のためにも、整体の視点からその理由を一緒に考えてみましょう。
自律神経の乱れと「首こり」との関係
自律神経が乱れる要因は多岐にわたりますが、当院では「首こり」がひとつの大きな鍵になっていると考えています。
これは、脳神経外科医・松井孝嘉氏(東京脳神経センター理事長)の書籍などにもあるように、首の筋肉の緊張が自律神経に影響を及ぼす可能性があるとされているためです。
では、出産や育児によって、なぜ「首こり」が起きやすくなるのでしょうか。
1. ストレス・精神的な疲れ
赤ちゃんのお世話は昼夜を問わず続くため、睡眠不足や緊張状態が続き、心身に大きな負担がかかります。その結果として、筋肉の緊張が高まり、首や肩に張りやこりを感じる方もいらっしゃいます。
2. 肉体的な疲労
赤ちゃんを長時間抱っこしたり、授乳の姿勢を続けたりすることで、首・肩・腰にかかる負担も少なくありません。特に近年は、育児と仕事を両立されている方も多いため、疲労が蓄積しやすくなっています。
3. 姿勢の問題
育児中は前かがみになる機会が多く、下を向く時間も増えがちです。このような姿勢が続くと、頭を支える首の筋肉が緊張しやすくなり、こりや張りの原因になることもあります。
4. スマートフォン・パソコンの使用
育児中でもスマートフォンを使う機会は多いかと思います。しかし、画面を見る時間が長くなると、姿勢が固定されたり、眼精疲労や首への負担がかかることも。昔に比べて現代のお母さんたちは、こうしたデジタル機器の影響を受けやすい環境にあると言えるかもしれません。
5. ホルモンバランスの変化
妊娠・出産という大きな身体の変化の中で、ホルモンや自律神経のバランスも変動します。これは自然な生理現象ではありますが、人によっては体調に影響が出ることもあるようです。
ただし、すべての方が不調になるわけではありません。その違いのひとつに、「首や肩の緊張の度合い」があるのではないかと、私たちは考えています。
画像では映らない「緊張」
首や肩の筋肉の緊張は、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査では映らないことが多いです。そのため、病院で異常が見つからない場合でも、不調を感じる方がいらっしゃいます。整体では、こうした「画像に映らない緊張」や「筋肉の硬さ」に注目して施術を行います。
バケツにたとえた自律神経の状態
自律神経の状態を、バケツに水を注ぐ様子に例えることがあります。
- ストレスや疲労が「バケツの水」
- 首や肩の緊張が「バケツの穴の状態」
首の状態が良ければ水が抜けやすく、不調を防ぎやすいと考えることもできます。反対に、緊張が強くなるとバケツの穴がふさがれ、少しの負担でも不調につながりやすくなります。
まとめ
出産後の不調でお悩みの方は、無理をせず、専門家に相談してみることをおすすめします。整体的なケアが、ご自身の心と体を整える一つの手段になる可能性もあります。